この記事の要点
事務所・店舗仲介は、問い合わせ・紹介からヒアリング、物件提案、内見、申込み、交渉、契約、引渡しという流れで進みます。 ただ、紹介案件の多くは、すでに条件通りの物件が見つからず困っている状態で相談が来ます。 その条件をそのまま受け取って物件を探しても、決まらないことがほとんどです。 条件の理由まで深掘りしてはじめて、新しい選択肢が見えてきます。今回は人形町で30坪を探していた案件が、八丁堀での契約に決まった例で、各段階を具体的に見ていきます。
「紹介できる物件が全くありません」「紹介しても返信がないんです」という相談を受けることがあります。
私は2015年から不動産仲介に携わり、オフィス専門の仲介会社で事務所・店舗の仲介を数多く経験してきました。 現在は独立し、これから事務所・店舗仲介を扱う方への伴走支援を行っています。 これまでの経歴は プロフィール にまとめています。
案件が人脈から来る話は オフィス仲介の案件はどこから来るか|人脈をフル活用する で書きましたが、この記事では、紹介された案件を実際にどう動かして契約まで進めるか、その流れを書きます。
この記事で紹介すること
- 事務所・店舗仲介の全体の流れ(8ステップ)
- 条件をそのまま受け取ると、物件が決まらない理由
- 実例|人形町30坪の希望が、条件の深掘りで八丁堀に決まるまで
- 契約〜引渡しで詰めておきたいこと(二重賃料を防ぐ交渉)
事務所・店舗仲介の全体の流れ(8ステップ)
事務所・店舗仲介は、おおまかに次の流れで進みます。
- 問い合わせ・紹介を受ける
- ヒアリング(希望条件と、その理由を聞く)
- エリア・物件の提案
- 内見
- 申込み
- 貸主との条件交渉
- 契約
- 引渡し・移転
流れ自体は、住宅の仲介と大きくは変わりません。ただ、事務所・店舗では、②のヒアリングの深さと、⑥⑦での交渉の組み立て方で、決まるかどうかが大きく変わります。次の見出しから、この2つを具体的に見ていきます。
条件をそのまま受け取ると、物件は決まらない
紹介を受ける案件の多くは、すでに困っている状態で相談が来ます。自分で探してもなかなか決まらない、他の仲介会社に頼んでも紹介が来ない、という段階です。
そこで「エリアはここ、坪数はこのくらい、賃料はこの金額まで」という条件をそのまま受け取り、それに合う物件を探して紹介しても、決まらないことがほとんどです。すでに条件通りの物件を探し尽くしている場合が多いからです。
プロとして間に入るなら、条件そのものではなく、その条件の理由まで聞く必要があります。理由が分かれば、条件を変えずに探し続ける以外の選択肢が見えてきます。
実例|人形町30坪の希望が、条件の深掘りで八丁堀に決まるまで
交流会で知り合った方から紹介を受けた案件です。人形町あたりで30坪ほどの事務所を探している会社でした。
希望条件は、今の事務所が人形町にあるので場所を変えたくないこと、男女別トイレがあること、そして賃料は相場よりも安い、ややシビアな金額でした。
紹介を受けた時点で、人形町あたりの物件はすでにひととおり見られている状態でした。そのまま同じエリアで探しても、新しい候補は出てきません。
そこで、賃料がシビアな理由と、人形町にこだわる理由を、あらためてヒアリングしました。
賃料については、単純に固定費をこれ以上上げたくないという理由でした。エリアについては、今いる人形町から場所が変わると、従業員が嫌がると思うから、というものでした。
「従業員が嫌がると思う」は、担当者の推測であって、確かめた事実ではありませんでした。そこで、従業員が実際に使っている通勤路線を調べてもらいました。
アンケートを取ってみると、秋葉原や八丁堀のあたりまでは、エリアを広げても通勤に支障がないことが分かりました。
八丁堀であれば、人形町より賃料の相場が下がります。条件に合う物件が見つかり、無事に契約となりました。
契約〜引渡しで詰めておきたいこと|二重賃料を防ぐ交渉
エリアを広げる方向性が固まってから、実際に八丁堀の物件を見て契約に至るまでは、1ヶ月ほどでした。ここは動きが早く進みました。
一方、従業員へのアンケートを含めたエリア選定そのものには、2ヶ月ほどかかっています。ヒアリングを深掘りする段階は、時間をかける価値がある一方、それなりの日数を見ておく必要があります。
もう1つ詰めたのが、移転時期の交渉です。今のオフィスは3ヶ月前の解約予告が必要でした。新しいオフィスでは、1ヶ月分の賃料免除期間をもらえるよう貸主と交渉しました。
解約予告の期間と、新オフィスの契約開始時期をあわせて逆算し、賃料が重なる期間を最小限に抑えられたことで、移転そのものの負担も減らせました。
事務所・店舗仲介の流れについてよくある質問
問い合わせから契約までは、どのくらい期間がかかりますか?
案件によって大きく変わります。今回の例では、紹介からエリア選定まで約2ヶ月、物件を見てから契約まで約1ヶ月でした。あわせて、今のオフィスの解約予告の時期から逆算しておくと、移転全体のスケジュールが立てやすくなります。
紹介しても返信がないときは、どうすればいいですか?
全く紹介できる物件がない、紹介しても返信がないという相談は多いです。そういうときこそ、あらためて時間をもらい、条件の理由を深掘りします。表面的な条件のまま探し続けても、状況は変わりません。
希望エリアに物件がない場合はどうしますか?
エリアにこだわる理由を確認します。今回のように「従業員が嫌がると思う」という推測であれば、通勤路線を調べるなど、根拠を持ってエリアを広げる提案ができます。理由が確認できて初めて、代わりの選択肢を出せます。
条件そのものではなく、その理由まで深掘りして聞く技術は 事務所仲介のヒアリングで聞くべきこと|条件より理由を掘る技術 に書きました。
賃料の条件がシビアな場合は、どう対応しますか?
なぜその金額なのか理由を聞きます。固定費をこれ以上上げたくないだけなのか、他に事情があるのかで、提案できる選択肢が変わります。理由を聞かずに金額だけで探し続けると、条件に合う物件がなかなか出てきません。
移転で家賃が二重にかかるのを防ぐには?
現オフィスの解約予告の時期と、新オフィスの契約開始時期をあわせて考えます。新オフィス側で賃料免除期間を交渉できれば、重なる期間を短くできます。今回の例でも、この交渉で負担を最小限に抑えました。
事務所仲介の流れは、ヒアリングの深さで決まる
事務所・店舗仲介の流れ自体は、問い合わせから引渡しまで、決まった段階を踏んでいくだけです。
ただ、紹介案件のように、すでに困っている状態で相談が来る場合は特に、条件をそのまま受け取って物件を探しても決まりません。条件の理由まで深掘りして、新しい選択肢を一緒に見つけていくことが、事業用・テナント仲介では一番重要だと感じています。
紹介された案件がなかなか決まらないときは
「紹介できる物件が見つからない」 「ヒアリングをどう深掘りすればいいか分からない」 という方は、現在の状況をお聞かせください。 現地を回りながらの対面指導も可能です。初回のご相談は無料です。

