この記事の要点
地方で賃貸仲介を立ち上げた最初の3か月は、問い合わせ数や成約件数を細かく追うよりも、「既存顧客への訪問」と「貸主への新規接触」のどちらで案件を作れるかを見る期間だと考えています。既存顧客開拓なら週10〜15件程度の訪問、貸主開拓なら週10件程度の新規接触を一つの目安にします。そのうえで、具体的な相談や媒介取得につながったか、どちらなら継続して行動量を確保できるかを見ながら、その会社に合う営業方法へ寄せていきます。
賃貸仲介へ新しく参入した会社から、「最初は何をKPIに設定すればいいですか?」と聞かれることがあります。
問い合わせ数、案内数、申込件数、成約件数など、追える数字はいくつもあります。ただ、地方で賃貸仲介を立ち上げたばかりの段階では、私は最初から細かく数字を設定しすぎないようにしています。
私は2015年から不動産仲介に携わり、オフィス専門の仲介会社で事務所・店舗仲介を中心に経験してきました。 現在は独立し、賃貸仲介へ参入する会社の立ち上げや案件の進め方を支援しています。 これまでの経歴は プロフィール にまとめています。
地方での立ち上げについては、 地方で賃貸仲介を立ち上げる方法|「媒介獲得型」と「顧客獲得型」、どちらから始めるか で「顧客獲得型」と「媒介獲得型」のどちらから始めるかを紹介しました。この記事では、その次の段階として、実際に動き始めた最初の3か月に何を数字として追い、どのように営業方法を見極めていくかを書きます。
この記事で紹介すること
- 最初の3か月は何を判断する期間なのか
- 既存顧客開拓では週10〜15件の訪問を追う
- 貸主開拓では週10件程度の新規接触を追う
- 3か月後に何を見て営業方法を決めるか
- 10件、20件の行動だけで「地方では難しい」と判断しない
最初の3か月は「どの営業方法なら案件を作れるか」を見る
賃貸仲介を始めると、どうしても売上や問い合わせ件数が気になります。もちろん、最初の段階で売上が立つのであれば、それに越したことはありません。たまたま取れた1件であっても、最初の成功体験はその後の営業を続けるうえで大きいと感じています。そのため、私は「最初の3か月は売上を見なくていい」とは考えていません。むしろ、案件や売上が出たのであれば、なぜこの案件が取れたのかを振り返り、成果につながった行動へ寄せていきます。
一方で、まだ案件が出ていない段階から、問い合わせ率や成約率まで細かく追っても、母数そのものが少なければ判断ができません。最初に見たいのは、既存顧客から案件を作る方法と、貸主を開拓して募集物件を増やす方法のどちらが、その会社に合っているかです。そのため、最初の3か月は成果指標よりも、まず行動量をKPIとして置くようにしています。
既存顧客開拓では週10〜15件の訪問を追う
すでに別事業を行っていて既存顧客がいる会社であれば、私はまず既存顧客への訪問を勧めます。例えば、内装会社であれば過去に工事をした店舗や企業、リフォーム会社であればこれまで取引した法人などです。
「どの業種のお客様から回ればいいですか?」と聞かれることがありますが、最初から業種を絞る必要はないと考えています。不動産の相談は、どこから出てくるか分かりません。住宅の住み替え相談が出ることもあれば、事務所移転、店舗の2号店、知人の出店相談につながることもあります。そのため、これまで取引のある会社には、業種に関係なく一度会いに行ってもらいます。
メールだけで終わらせない
仲介事業を始めたことを既存顧客へメールで案内する会社は多いです。ただ、メールを一度送っただけでは、そのまま忘れられてしまうこともあります。
私は、「先日メールでもご案内したのですが、不動産仲介を始めまして」と伝えたうえで、「ちょうど近くでお客様の案内があったので寄りました」「この周辺で物件を探していて、近くまで来たのでご挨拶に来ました」など、訪問する理由を作って直接会いに行くことを勧めています。
最初の目安は、週10〜15件程度です。ここでは、何件相談が出たかまでを最初からKPIにはしていません。まず見るのは、何件、既存顧客へ実際に会いに行ったかです。
立ち上げ支援をしていると、この訪問自体をほとんどしないまま「既存顧客から案件が出ない」と判断してしまうケースがあります。最初の段階では、成果率よりも、まず十分な接触数を作れているかを見るようにしています。
貸主開拓では週10件程度の新規接触を追う
既存顧客との接点が少ない場合や、地域の流通物件が少ない場合には、貸主開拓へ比重を置きます。車や徒歩で駅周辺や商業エリアを回り、空いている店舗や事務所を探します。必要に応じて所有者を確認し、連絡を取ります。
この活動で私が一つの目安としているのが、週10件程度の貸主への新規接触です。地域によって物件数も所有者の反応も異なるため、全国共通の数字ではありません。ただ、地方では長期間空いている店舗や、募集方法に困っている所有者も比較的見つかりやすく、私の経験では5件ほど貸主へ接触すると、1件程度は募集を任せてもらえるようなケースもあります。
もちろん「5件回れば必ず1件取れる」という意味ではありません。地域や物件、話し方によって結果は変わります。むしろ課題になるのは、この活動を継続できるかどうかです。空き物件を探して、所有者を調べ、電話や訪問で話をする。普段こうした営業をしていない人にとっては慣れない作業なので、数回やっただけで止まってしまうことがあります。
そのため貸主開拓でも、最初から媒介取得率だけを見るのではなく、今週何件の貸主へ新しく接触したかを先に追います。
3か月後に何を見て営業方法を決めるか
3か月ほど動けば、その会社にとってどちらの営業方法が合っていそうかが少しずつ見えてきます。私が確認するのは、大きく3つです。
既存顧客から具体的な相談が出たか
既存顧客を訪問する中で、「ちょうど移転を考えている」「2号店を探している」「知り合いが物件を探している」といった具体的な話が出ているのであれば、既存顧客開拓を続ける価値があります。
貸主開拓から媒介取得につながったか
貸主への新規接触から募集を任せてもらえる物件が増えているのであれば、媒介獲得型を伸ばせます。募集物件が増えれば、その物件から問い合わせを取ることもできますし、既存顧客へ提案できる物件も増えていきます。
どちらなら行動数を確保できるか
ここもかなり見ています。新規開拓が得意な人であれば、貸主への訪問や電話をそれほど苦にせず続けられることがあります。一方で、新規営業があまり得意ではなくても、これまで取引してきた顧客であれば会いに行けるという人もいます。どちらの営業方法が理論上優れているかではなく、その人が継続して行動できる方法かを見る必要があります。
賃貸仲介は一度だけ営業すれば終わる仕事ではありません。最初の3か月で成果が出た方法と、続けやすい方法が重なっているのであれば、そこへ営業の比重を寄せていきます。
10件、20件の行動だけで「地方では難しい」と判断しない
立ち上げ支援をしていてよくあるのが、「10件、20件回ったのですが、案件になりませんでした。やはりこの地域では厳しいでしょうか」という相談です。
ただ、新しく始めた営業活動を10件、20件試しただけで、その地域で成功できるかどうかまで判断するのは難しいと考えています。初めて貸主へ連絡するのであれば、最初から話し方が完成しているわけではありません。既存顧客へ訪問するときも、最初は仲介事業をどのように説明すればいいのか迷うはずです。
何件か回る中で、「こう伝えると話を聞いてもらいやすい」「この質問をされることが多い」「この業種からはこういう相談が出る」といったことが分かってきます。実際に継続して動いている方からは、途中で具体的な質問が出てくることが多いです。例えば、「貸主からこう断られたのですが、次はどう伝えればいいですか」「この空き物件にも声を掛けていいですか」「既存顧客からこういう相談を受けたのですが、どう進めますか」といった内容です。
活動していれば、その途中で必ず分からないことや改善したいことが出てきます。逆に、活動数だけを聞くと「20件回った」と言われても、どのように動いたのかが見えないケースもあります。最初に必要なのは、少ない件数で向き不向きを判断することではなく、一定量の行動をしながらやり方を修正することです。
ただし、成果が出たらその方法へ寄せる
一方で、「3か月間は必ず同じことを続けなければいけない」という話でもありません。例えば、既存顧客を5件回った段階で具体的な店舗探しの相談が出たのであれば、その成功体験は大切にします。貸主へ数件接触したところ、すぐに募集を任せてもらえたのであれば、貸主開拓を増やす判断もできます。
立ち上げ期に最初の売上が上がることは、その後の営業を続けるうえでも大きいです。そのため私は、何がうまくいったのかを確認して、成果が出た行動を増やすという考え方をしています。最初に決めたKPIを守ることそのものが目的ではありません。KPIは、その地域と会社に合う営業方法を見つけるために使う数字です。
地方で賃貸仲介を始めたときのKPIについてよくある質問
最初から問い合わせ数や成約件数をKPIにしなくてもいいですか?
私は、立ち上げ直後はまず行動量を追うことが多いです。まだ募集物件や顧客数が少ない段階では、問い合わせ率や成約率を見ても母数が小さく判断しにくいためです。ただし、早い段階で成約や売上が出た場合は、その案件がどの活動から生まれたのかを確認します。
既存顧客はどの業種から訪問すればいいですか?
最初から業種を絞らず、過去に取引した顧客には広く会いに行くことを勧めています。住宅、事務所、店舗のどの相談が出るかは、訪問前には分からないためです。
既存顧客へのメールだけでは足りませんか?
メールでの告知も行いますが、それだけで終わらせない方がよいと考えています。近くへ行ったときなどに直接訪問し、仲介事業を始めたことを改めて伝えると、相談につながることがあります。
貸主開拓は何件くらい行えば成果が出ますか?
地域差が大きいため一律には言えません。私は最初の行動量として週10件程度を一つの目安にしています。地方では5件ほど接触して1件程度募集を任せてもらえるケースも経験していますが、これはあくまで参考値です。
3か月動いて成果が出なければ、やめた方がいいですか?
件数だけで判断するのではなく、どの程度の行動量を確保できたのか、その間に営業方法を改善できたのかを確認します。10件、20件程度の活動だけで地域そのものが難しいと判断するのは早いと考えています。
最初の3か月は、成果が出る営業方法を探す期間
地方で賃貸仲介を立ち上げた最初の3か月は、細かな数字を大量に設定するよりも、既存顧客へ会いに行く、貸主へ新規接触する、どちらから具体的な案件が出るかを見る、どちらなら継続して行動量を確保できるか確認する、成果が出た方法へ営業の比重を寄せる、という流れで考えています。
既存顧客開拓なら週10〜15件程度、貸主開拓なら週10件程度という数字も、絶対的な目標ではありません。大切なのは、数件動いて結果が出なかっただけで「賃貸仲介は難しい」と結論を出さないことです。
初めて取り組む営業であれば、最初にある程度の活動量が必要です。動く中で話し方を変え、反応を見て、自分たちに合う方法へ修正していく。KPIは、人を管理するためのものではなく、地方で自社に合う営業方法を見つけるために使うものだと考えています。
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賃貸仲介の伴走支援 では、地域の物件流通量や既存顧客との関係、人員体制などを確認したうえで、どの営業方法から始めるか、どの程度の行動量を設定するかについても一緒に整理しています。
地方で賃貸仲介を立ち上げたものの、何から動けばいいか分からない方へ
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