この記事の要点
事務所仲介のヒアリングでまず見極めるべきは、話している相手に決裁権があるかどうかです。 決裁権のない担当者にどれだけ聞き込んでも、条件は動きません。 そのうえで、希望条件そのものではなく、その条件が生まれた理由まで深掘りすると、お客様自身も想定していなかった選択肢を提案できます。 これができると信頼を得られますが、できないまま進めると、他社に案内の機会を取られることもあります。 2つの実例をもとに、聞き方の技術を書きます。
伴走支援で一番最初にお伝えすることの1つが、ヒアリングの聞き方です。
私は2015年から不動産仲介に携わり、オフィス専門の仲介会社で事務所・店舗の仲介を数多く経験してきました。 現在は独立し、これから事務所・店舗仲介を扱う方への伴走支援を行っています。 これまでの経歴は プロフィール にまとめています。
紹介された案件を条件の深掘りで動かした実例は 紹介された事務所案件の動かし方|条件の深掘りから契約までの実例 で書きましたが、この記事ではヒアリングそのものの技術を、うまくいかなかった例とうまくいった例の両方から書きます。
この記事で紹介すること
- ヒアリングで最初に見極めること|相手に決裁権があるか
- 決裁権を見誤った失敗|社長秘書にヒアリングを続けた結果
- 条件より理由を聞く|坪単価と時期を深掘りして見えた提案
- エリアを広げる聞き方のコツ|期待を持たせる一言
ヒアリングで最初に見極めること|相手に決裁権があるか
実際にやり取りする相手が、物件を決める権利を持っているとは限りません。
代表に言われたとおりに物件を探しているだけの担当者や、複数人で物件開発を進めている会社の中でも、まだ物件開発に慣れていない担当者に当たることがあります。そういう相手にどれだけヒアリングを重ねても、条件はなかなか動きません。
私も仲介の仕事を始めたころは、相手の立場を考えずに、ただ色々なことを聞いていました。今は、目の前の相手がどこまで意思決定に関われる立場かを、まず意識するようにしています。
決裁権を見誤った失敗|社長秘書にヒアリングを続けた結果
ある案件で、私はずっと社長の秘書の方にヒアリングをしていました。
条件について聞くと、いつも答えは返ってくるのですが、実際にはその内容を社長に確認しているわけではなく、感覚で回答している状態でした。
結局その案件は、社長に直接会って案内をした別の仲介会社が、当初希望していたエリアから少し離れたエリアで成約させました。
私も元々は社長への案内を提案しようと思っていました。ただ、秘書の方から「とりあえず希望したエリアの物件だけ送ってください」と言われたとき、それをそのまま受け取ってしまいました。ここが良くなかった点です。
「とりあえずこの条件で」と言われたときほど、その条件が誰の意向なのか、確かめる価値があります。
条件より理由を聞く|坪単価と時期を深掘りして見えた提案
別の案件では、ある会社から「賃料坪単価はこのくらいで探してほしい」という希望を受けました。
エリアを尋ねると、「この坪単価だと、このあたりのエリアしかないので、その辺りで探している」という答えでした。この回答の仕方が気になりました。
確認すると、エリア自体にこだわりはなく、とにかく坪単価が安めの物件が欲しい、というのが本音でした。
さらに理由を深掘りすると、一時的に赤字を減らすために固定費を下げたいこと、ただし数年後にはまた大きめのオフィスを借りる予定があることが分かりました。「数年後」を詰めて聞くと、3〜5年後という見通しでした。
そこで、中心部から離れた安いエリアで探すのではなく、建替え予定があり入居期間が決まっている物件を、格安の坪単価で借りる方法を提案しました。
ちょうど良い坪数で、3年の定期借家契約になっている物件があり、そこで成約しました。建替え予定物件は、退去時の原状回復工事費が免除になる場合もあり、費用面でも納得してもらえました。
「安い物件を探してほしい」という条件だけを受け取っていたら、この提案は出てきません。理由と時期まで聞いたことで、選択肢そのものが変わりました。
エリアを広げる聞き方のコツ|期待を持たせる一言
エリアを広げる提案をするときは、聞き方にもコツがあります。
私がよく使うのは、次のような聞き方です。
「〇〇エリアが希望で、理由として通勤者が多い〇〇沿線だということであれば、同じ相場エリアである〇〇エリアも候補には入りそうでしょうか。実際、〇〇エリアより〇〇エリアのほうが、当てはまりそうな物件は感覚的に多いと思っています。」
最後の一言に工夫があります。断定はせず、「こちらのエリアのほうが良い物件が多いかもしれない」と期待を持ってもらえる言い方にしています。
エリアを広げる理由を、通勤路線の調査など根拠を示して説明する方法もあります。この考え方は 紹介された事務所案件の動かし方 で書きました。今回のような会話の中での聞き方も、あわせて持っておくと使い分けができます。
事務所仲介のヒアリングについてよくある質問
ヒアリングでは、まず何を聞けばいいですか?
希望条件そのものだけでなく、その条件がなぜ必要なのか、いつまでの話なのかまで聞きます。条件の背景が分かると、条件を変えずに探し続ける以外の選択肢が見えてきます。
相手に決裁権があるかどうかは、どう見極めますか?
条件の理由を聞いたときに、すぐ答えられるか、それとも「確認します」「持ち帰ります」という回答が続くかで判断します。曖昧な回答が多いようなら、決裁者に直接会う機会を作ることを考えます。
「とりあえずこの条件で探してください」と言われたら、そのまま受け取っていいですか?
一度立ち止まって、その条件が誰の意向なのかを確認したほうがいいです。そのまま受け取って動いた結果、決裁者に会えないまま、他社に案内の機会を取られることもあります。
エリアを広げる提案は、どう伝えれば角が立ちませんか?
断定せず、相手の状況を踏まえた聞き方にします。「こちらのエリアも候補に入りそうでしょうか、実はこちらのほうが物件が多い印象です」のように、期待を持ってもらえる言い方を意識しています。
深く聞きすぎると、嫌がられませんか?
相手の立場を考えずに何でも聞くと、負担に感じられることがあります。目の前の相手がどこまで答えられる立場かを踏まえたうえで、聞く範囲を選ぶようにしています。
深掘りヒアリングが、信頼と新しい選択肢につながる
ヒアリングは、条件を右から左に受け取る作業ではありません。
まず、話している相手が決裁権を持っているかを見極めること。そのうえで、条件そのものではなく、その理由や時期まで深掘りすること。この2つができると、お客様自身も気づいていなかった選択肢を提案できます。
それができないまま進めると、今回の秘書の例のように、他社に決められてしまうこともあります。私が伴走支援でお伝えしているのも、まずこの聞き方の部分です。
ヒアリングの聞き方で悩んでいる方へ
「条件通りに探しているのに決まらない」 「どこまで踏み込んで聞いていいか分からない」 という方は、現在の状況をお聞かせください。 初回のご相談は無料です。

