地方で賃貸仲介を立ち上げる方法|『媒介獲得型』と『顧客獲得型』、どちらから始めるか

この記事の要点

地方で賃貸仲介を立ち上げるとき、最初に整理したいのが「どこから案件を獲得するのか」です。 借りたい顧客を集める方法と、貸主から募集物件を預かる方法では、営業の動き方が大きく変わります。 私が支援している地方企業では、当初は既存人脈を生かした顧客獲得から始めましたが、地域の物件流通を見た結果、途中から媒介獲得を中心に切り替え、約2か月で店舗系物件3件の募集窓口を任されました。

地方で新しく賃貸仲介を始めたいという相談を受けたとき、私は最初から「ポータルサイトに掲載しましょう」「電話営業をしましょう」と施策を決めることはしていません。

最初に確認するのは、その会社がどのくらい不動産事業に時間を使えるのか、不動産に詳しい人がいるのか、現在の従業員数や今後の採用予定などです。

私は2015年から不動産仲介に携わり、オフィス専門の仲介会社で事務所・店舗仲介を中心に経験してきました。 現在は独立し、これから賃貸仲介へ参入する会社の立ち上げ支援も行っています。 これまでの経歴は プロフィール にまとめています。

この記事では、現在支援している地方企業の事例をもとに、賃貸仲介を立ち上げるときの「媒介獲得型」と「顧客獲得型」という2つの考え方について紹介します。

この記事で紹介すること

  1. 「顧客獲得型」と「媒介獲得型」の違い
  2. 既存の店舗オーナーを生かして顧客獲得型から始めた理由
  3. 紹介できる物件が足りず、現地開拓で媒介獲得へ切り替えた経緯
  4. 約2か月で店舗系物件3件の募集窓口を任された方法
  5. 地方でどちらの型から始めるかを判断する基準

賃貸仲介を立ち上げる前に「どこから案件を取るか」を整理する

今回支援したのは、東海地方の地方都市で以前から内装工事を行っている会社です。

店舗や事務所のデザイン、一戸建てのリフォームなどを手掛けていましたが、不動産に詳しい担当者はいませんでした。賃貸仲介についても、専任担当者を置いて本格的に参入するというより、「売上が作れそうなら取り組んでみたい」という段階でした。

そのため、最初の打ち合わせでは営業方法を決める前に、次の内容を確認しました。

  • 不動産事業にどのくらい時間を使えるのか
  • 不動産に詳しい人が社内にいるのか
  • 現在の従業員数、今後どのくらい人員を増やす予定なのか
  • 既存事業でどのような顧客と接点があるのか

そのうえで考えたのが、「顧客獲得型」と「媒介獲得型」のどちらから始めるかです。

この記事では便宜上、借りたい顧客を先に獲得して市場に出ている物件を仲介する方法を「顧客獲得型」、貸主から募集物件を預かり、その物件への問い合わせや紹介から成約を作る方法を「媒介獲得型」と呼びます。

  • 顧客獲得型:借りたい人を先に集め、市場に出ている物件を紹介する
  • 媒介獲得型:貸主から募集物件を預かり、その物件から顧客との接点を作る

どちらか一方しかやらないという意味ではありません。ただ、立ち上げ時は人員も時間も限られるため、最初にどちらへ比重を置くのかを整理しておいた方が動きやすくなります。

既存の店舗オーナーを生かした「顧客獲得型」から始めた

今回の会社には、内装事業を通じて多くの店舗オーナーとの接点がありました。そこで最初は、顧客獲得型から始めることを提案しました。

想定していたのは、既存顧客から2号店や移転の相談を受ける、新規出店を考えている顧客の物件探しを手伝う、知り合いの出店希望者を紹介してもらう、内装の相談を受けた段階から物件探しにも入る、といった流れです。

新しく広告費をかけて知らない顧客を集めるより、すでに接点がある店舗オーナーへ「今後は物件探しから対応できます」と知らせる方が、最初の案件にはつながりやすいと考えました。

まず、賃貸仲介を始めることを既存顧客へ一斉にメールで案内してもらいました。すると、すぐに動きそうな相談が1〜2件出てきました。その中には、飲食店の2号店を探している店舗オーナーからの相談もありました。

ここまでは、当初考えていた顧客獲得型で進められています。ところが、実際に顧客へ物件を提案しようとしたところ、別の問題が出てきました。

紹介できる物件が足りず、現地開拓で媒介獲得へ

今回の地域では、ATBBやレインズを確認しても、店舗を探している顧客へ提案できる物件がなかなか見つかりませんでした。顧客を獲得できても、紹介できる物件がなければ仲介は進みません。

そこで、ネット上に出ている物件を探すだけではなく、自分たちで物件を開拓する方法を伝えました。車で街を走ったり、商店街を歩いたりしながら空いていそうな建物を探し、登記情報から所有者を確認して連絡する、という流れです。現地での物件の探し方は オフィス物件の探し方|アットホーム・レインズだけでは見つからない理由 でも書きました。

このとき、いきなり「物件の募集を任せてもらえませんか」と営業するようには伝えていません。実際に店舗を探している顧客がいるため、「○○町の物件に興味を持っている、美容室を検討している方がいまして」というように、具体的な業種まで伝えて話を始めてもらいました。本当に物件を探している顧客がいることが分かれば、貸主側にも話を聞いてもらいやすくなります。

今回の物件開拓では、突然知らない不動産会社から連絡していると思われないよう、以前からその地域で内装業を行っている会社であることも伝えてもらいました。地元で昔から事業をしている会社だとわかることで、貸主にも会社の背景を伝えやすくなります。

約2か月で店舗系物件3件の募集窓口を任された

貸主と話ができた後は、「現在、募集を任せている不動産会社は決まっていますか?」と確認してもらいます。募集会社が決まっていなければ、「もしよければ周辺の相場資料をお持ちして、次に募集するならどのくらいの賃料が良いか提案させていただけませんか」と次の面談につなげます。

当初の目的は、顧客へ紹介できる物件を増やすことでした。ところが、この動きを続けた結果、貸主から「それなら募集もお願いしたい」という話が出るようになりました。

約2か月で、30〜40坪前後の店舗系物件3件について募集窓口を任されています。3件とも、既存顧客や紹介から預かったものではなく、街を回って空室らしい物件を見つけ、所有者を調べて接触した現地開拓から取得した物件です。

書面上で専任の契約を結んでいるわけではありませんが、実際にはこの会社が募集窓口となり、貸主と募集条件を整理しながら募集を進めています。今回の支援先が活動する地域では、貸主から「専任のような契約書までは結びたくない」という反応がありました。地方で営業する場合、都市部で行ってきた方法をそのまま当てはめるのではなく、その地域の商習慣を確認しながら進める必要があります。

地方でどちらの型から始めるかを判断する基準

今回の会社では、当初は顧客獲得型から始めました。既存の店舗オーナーとの人脈があり、実際に2号店を検討している顧客も見つかったため、この判断自体は間違っていなかったと思います。

ただ、その地域ではATBBやレインズに出ている店舗物件が少なく、顧客を集めても紹介できる物件が足りませんでした。そのため現地開拓を始めたところ、媒介取得の方が早く成果につながり、現在は媒介獲得を中心に動く形へ切り替えています。

一方で、顧客獲得をやめたわけではありません。募集物件が増えれば、その物件から新しい問い合わせが入る可能性があります。既存の店舗オーナーへ「こういう物件を預かりました」と案内することで、「実は2店舗目を考えている」「3店舗目を出すならこういう場所がいい」と新しい相談が出ることもあります。

媒介を取る→紹介できる物件が増える→既存顧客へ提案できる→新しい出店相談が出る→問い合わせから新規顧客も増える、という流れを作ることができます。私は、地方で人員を大きくかけられない会社の場合、この形は相性が良いと感じています。1件の媒介を取ることで、その物件自体が新しい顧客との接点になるからです。

別の会社から地方で賃貸仲介を立ち上げたいと相談された場合、私は主に次の内容を確認します。

  • 営業に何人を使えるのか
  • 不動産事業へどの程度時間を使えるのか
  • 既存顧客や取引先との接点があるか
  • ATBBやレインズに紹介可能な物件がどの程度出ているか
  • 現地で物件開拓を行える体制があるか

ATBBやレインズに十分な物件が出ており、既存顧客や法人との接点も多い地域であれば、顧客獲得から始める方法もあります。特に都市部では、すでに取引のある会社を訪問し、移転や出店の予定を聞いていく方が案件獲得に近いケースもあります。

一方で、今回のように市場へ出ている物件が少ない地方では、借り手だけを集めても提案できる物件がありません。その場合は、自分たちで現地を回り、物件を開拓しながら媒介を増やす方が、売上につながる入口を作りやすいと考えています。

最初からどちらか一方に決める必要はありません。今回の事例も、最初は顧客獲得型から始まり、実際に動いた結果を見て媒介獲得型へ比重を移しています。立ち上げ時に考えたいのは、「一般的にどちらが正しいか」ではなく、自社の人員・人脈と、その地域の物件流通を見たときに、どちらから売上を作りやすいかです。

地方で賃貸仲介を立ち上げるときによくある質問

地方では媒介獲得型から始めた方がいいですか?

必ずしもそうではありません。まずATBBやレインズなどを確認し、顧客へ紹介できる物件がどの程度流通しているかを見ます。紹介物件が少ない地域では、現地開拓を含めた媒介獲得を早めに始める方法があります。

既存顧客がいる場合は、顧客獲得型から始めてもいいですか?

今回の支援先も、既存の店舗オーナーとの人脈を生かして顧客獲得型から始めました。2号店や移転、新規出店の相談が出る可能性があるため、まず既存顧客へ賃貸仲介を始めたことを知らせる方法があります。

空いている店舗を見つけたら、すぐ貸主へ営業してもいいですか?

私は、募集を任せてもらう営業から入るより、実際に探している顧客がいる場合は「この物件を紹介できないか」という相談から入るようにしています。その後、募集会社が決まっていなければ、相場資料や募集条件の提案へ進みます。

地方でもレインズやATBBだけで物件を探せますか?

地域によります。今回支援した地域では、店舗を探している顧客へ提案できる物件が少なく、現地で空室らしい建物を探す必要がありました。立ち上げ前に、自分が扱いたい物件種別がどの程度掲載されているか確認しておくと判断しやすくなります。

人員が少なくても賃貸仲介を始められますか?

今回の支援先も、最初から専任担当者を置いて大きく始めたわけではありません。ただし、人員が限られるほど営業先や業務を絞る必要があります。誰から案件を取るのかを決めずに、集客・物件開拓・掲載・案内を同時に始めると動きが分散しやすくなります。

地方の賃貸仲介は、最初の営業方法を固定しすぎない

今回の支援先は、既存の店舗オーナーとの人脈があったため、当初は顧客獲得型から賃貸仲介を始めました。ところが、実際に案件が出てから物件を探してみると、地域内で紹介できる物件が少ないことが分かりました。

そこで現地開拓へ動き、約2か月で30〜40坪前後の店舗系物件3件の募集窓口を任され、現在は媒介獲得型を中心に動いています。

地方で賃貸仲介を立ち上げるときは、最初から全国共通の方法を決めるのではなく、「自社にどんな顧客接点があるか」「営業に何人使えるか」「その地域に紹介できる物件がどの程度あるか」を見ながら、売上を作りやすい入口を決めていく方が現実的です。

実際に動き始めた後、最初の3か月に何を数字として追えばいいかは 地方で賃貸仲介を始めても案件が来ない|最初の3か月で追いたいKPIと行動量 で紹介しています。動き始めたのに案件がない場合の見直し方は 不動産開業後に集客できないとき|案件獲得に向けて見直す3つのポイント にまとめています。店舗・オフィス仲介へ参入する際、加盟型サービスと個別コンサルのどちらが合うかは 店舗・オフィス仲介への参入は加盟型サービスと個別コンサルのどちらがいい?違いと選び方 でも紹介しています。

賃貸仲介の伴走支援 では、こうした立ち上げ時の営業方法の整理から一緒に進めています。

地方で賃貸仲介の立ち上げを考えている方へ

「何から営業すればいいか分からない」 「顧客を集めるべきか、物件を預かるべきか整理したい」 という方は、現在の会社の体制や商圏をお聞かせください。 初回のご相談は無料です。

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この記事を書いた人

オフィス・テナント仲介を専門とする宅地建物取引士(業界歴10年以上)。開業・参入・展開の伴走支援を行っています。

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